総務省の通信系国家資格(無線従事者免許ほか)侮り難し!
総務省の通信系国家資格(無線従事者免許ほか)侮り難し!
電気通信設備の工事担任者の資格者証が昨日、届いた。申請を出して一週間だ。
総務省も仕事が速い。
さて、標題の件である。
総務省が管轄する通信系・ICT系国家資格としては、下記のようなものがある。
いったい何が「侮り難し」なのか。
それは、知名度は正直言ってイマイチなのであるが、下記の特徴がある点である。
法律の下で身分が証明される「終身免許」であり「業務独占資格」である
中級以上の試験になると必要な知識レベルが極めて高度になる
取得後も自覚を持ち技術を高める努力をすることが義務として明文化されている
例えば、知識レベルとしては中級クラスとされ、無線の上級クラスへの登竜門として位置づけられている、「第一級陸上特殊無線技士」(一陸特)の試験範囲の中から、トピックを紹介すると、下記のようなものがある。
音楽CDの音質を「原音に最も近い」と思っているとしたらそれはデジタル技術者としては恥ずかしい
CD(コンパクト・ディスク)が生まれてから30年以上が経過し、その後の音声データ非可逆圧縮技術(MP3等)の浸透から、CD音源はその圧縮前の音源として、いつの間にか「高音質」であるという印象が浸透している。
だが、CD音源は具体的にどの程度「高音質」なのか。いわゆるハイレゾ音源とはどう違うのか。説明できる人は案外多くない。
(1) デジタル化とは
CD音源は、デジタル信号である。
デジタル信号であるという時点で、それは「原音」データでは無い。
アナログデータである素の音声データを、PCM(パルス・コード・モジュレーション)という手法によって、デジタル化する。
PCMの手順は、「標本化(サンプリング)」「量子化」「符号化」という三段階を経る。
CD音源の代表的な規格はCDDAである。
それは、
44100ヘルツ(周波数)で標本化(サンプリング)
16ビット(65536レベル)で量子化
するというものである。
(2) サンプリング定理
「シャノンの標本化定理」(サンプリング定理)とか「ナイキスト周波数」など、言葉はいろいろある。
元々のアナログ信号をデジタル化する時に、最低限、どのくらいの周波数でサンプリングを行う必要があるか。
これは、昔からサンプリング定理として数学的に証明されている。
(サンプリング定理)
原信号に含まれる最高周波数の2倍以上でサンプリングすれば、少なくとも原信号の形は保たれる
逆に言えば、デジタル信号の周波数の2分の1を超える周波数音源は、再現できない
サンプリング定理/エイリアシング - DSP の基礎・トレーニング - TI
(3) 人間の可聴域
一方で、人間の耳が音声を識別できる周波数の範囲は、だいたい以下であるとされている。
- 20ヘルツ ~ 20000ヘルツ
年齢によってこれは異なり、加齢と共に、上記の範囲は狭くなる。
一般的な大人の中年くらいの人であれば、200~16000ヘルツくらい聴こえれば良い方である。
(4) CDのサンプリング周波数の根拠
上記の「サンプリング定理」と「人間の可聴域」から、以下の事が言える。
- 人間の可聴域を考慮すると、可聴域の最高周波数20000ヘルツが最低限再生できる周波数でサンプリングできれば、理論上は人間の耳では違いはわからないレベルになる
20000ヘルツを最低限再生できるサンプリング周波数は、その2倍の40000ヘルツである。
CDのサンプリング周波数は44100ヘルツである。
ざっくり言うならば、これがCDのサンプリング周波数の根拠である。
(5) ハイレゾにこだわる人は可聴域の外側も重視している
ここではハイレゾについては詳細は書かないが、ハイレゾ音源にこだわっている人は、上記の「人間の可聴域にギリギリ収まる範囲の周波数」というものに対して、「高音質」とは思っていない人なのである。
可聴域よりも高い周波数で、空気は振動している。(人間には聴こえないが)
それが音質に影響があるという事である。
(ただし、上記したような理屈を「ちゃんとわかっている」人に限る。ちゃんとわかっていないで、ハイレゾの方がCDよりも音質が良いと言っているのは、恥ずかしい事である)
これは音楽の知識ではなく情報のデジタル化の知識である
上記に軽く書いた事項は、「第一級陸上特殊無線技士」(一陸特)の試験範囲の「ごく一部」である。
それも、内容的には簡単な部類に入る。
この試験で最も難しいのは、電気回路・電子回路、及び、デシベル計算等の計算問題であろう。
ほかにも無線通信・人工衛星通信の知識も範囲となっている。
「電気通信主任技術者」(伝送交換・線路)は、上記の「一陸特」よりもはるかに難しい。
そして「第一級・第二級陸上無線技術士」(一陸特の上位資格)は、無線工学に特化すれば、更に難しい。
知名度はいまひとつであるが、世の中にはこのような世界もある。
来年は頑張りたいと思う。