IT (情報技術) 学習記録-もしくは中高年(就職氷河期世代)の生き方-

IT系,または,電気通信系資格の学習記録を中心に。もしくは中高年(就職氷河期世代)の生き方,働き方,世の中。中高年の転職の現実。

「プロジェクトマネジメント」だけでは無意味である理由


「プロジェクトマネジメント」だけでは無意味である理由


経済産業省の外部組織であるIPA・独立行政法人情報処理推進機構が中心となってとりまとめた、ITSS(ITスキルスタンダード)の、バージョン3が公開されてから、8年経過した。

ITSSそのものの成立から合わせると10年以上が経過した現在、それなりに、IT系企業を中心に、それを取り入れた人事制度(日本型のエセ成果主義と融合してしまった感じもあるが)も広まってきたように思える。


私の観測範囲では、あいかわらず「大規模開発プロジェクト」がうまく運営できずに炎上していることを多く見かける。

自身も、巻き込まれることが多い。

炎上プロジェクトが発生するたびに、経営層は決まって「PM力が足りない」「PM力を養成しなければ」と声高に言う。

PMとは、プロジェクトマネジメントのことである。

…まぁ、そういうことを声高に言う経営層は数年ごとに任期を終えて入れ替わっていくわけだが…。


炎上プロジェクトで必ず発生すること


炎上プロジェクトで、まず必ず発生することは、

現場リーダー(PL・SLなど)とプロジェクト運営陣(PM・PMOなど)の対立

…である。

その対立は、必ずしも表面化はしないこともあるが、裏も含めれば必ず発生している。

そしてその対立は、極めて深刻な場合が多い。


問題の根底には、人材不足がある。

開発プロジェクトの要は、現場リーダーである。

実は開発プロジェクトで最も必要とされ、常に不足が言われる存在は、現場リーダーなのである

既存業務、現行システムの知識などが(比較的)豊富であり、その組織での開発経験がある人材が、現場リーダーに登用される。

小規模なプロジェクトであれば、現場リーダーだけでプロジェクト運営も可能だ。

その組織での開発経験を積むことで、自然と、プロジェクトマネジメントの能力も磨かれる。


しかし、大規模プロジェクトになると、現場リーダーだけでプロジェクト運営を行うことが不可能になってくる。

そこで、PMOなどのプロジェクト運営を主に担う者が必要となる。

プロジェクト運営を主に担う者。

この役割に適した人材は、奇しくも、現場リーダーの要件とかなり重なってしまう

だが、実際には、ただでさえ担い手が少ない現場リーダーの要件を満たすような人材が、あえてプロジェクト運営に回されることは非常に少ない

そのため、現場ではない場所(組織外・中途採用者など)から、埋め合わせをしようということが発生する。


こうして登用されたプロジェクト運営を主に担う者。(PMOなど)

当然ながら、その組織での開発経験は無いという者も多い。

その者自身に、スキル上の問題があるという訳ではない。

だが、その組織での開発経験がなく、開発対象の業務やシステムに対する知識もない。

こうした状況で、いきなりプロジェクト運営を主に担うと、必ず、現場リーダーと対立状態になってしまう

つまり、こうした登用のしかたが、そもそも間違っているのである。


よほどのスーパーマン、いろんなプロジェクトを渡り歩き、問題解決のために辣腕を発揮してきた、というような人材ならば、別かもしれない。

しかし、実際にはそのようなスーパーマンはほとんどいない。

スーパーマンではないことが悪いことではない。


職種「プロジェクトマネジメント」にエントリレベルが存在しない理由


ITSSの定義上、職種「プロジェクトマネジメント」にレベル1~2は存在しない。

レベル1~2は、エントリーレベルとされている。

職種「プロジェクトマネジメント」は最低レベルでもレベル3と定義されている。

組織によっては、職種「プロジェクトマネジメント」はレベル4から開始という組織も多いと思われる。


これは、開発現場に当てはめて考えるならば、最低でも現場の主担当として業務をそれなりに経験した人、可能であれば現場リーダーを経験した人が、やっとスタートラインに立てる職種だということである。

開発や保守の経験を主担当としてリーダーになるまで積む中で…

  • 対象業務知識の蓄積

  • 対象システム知識の蓄積

  • 汎用ITスキルの蓄積

  • プロジェクト管理・マネジメントスキルの蓄積

…が行われる。

その中で、特にプロジェクトマネジメント系の業務に向いている、と組織も認知し、本人も自覚する場合に、はじめてプロジェクトマネジメント職種への転換が行われる。

ここで重要なことは、上記でいうところの1番目と2番目の要素である。

当該組織・当該企業固有の業務やシステムの知識も十分に知っているという点が重要となる。

つまり、「PM力」のみを伸ばす、とか、「PM力」のみの人材、というものは、そもそも存在し得ない。


「PM力が足りない」「PM力を養成しなければ」ではなく、

「現場リーダーが足りない」「現場リーダーを養成しなければ」

という方が正しい。

無論、現場リーダーこそ、最も養成や確保が困難な存在であることは、上述した通りなのだが…。


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