IT業界の若手はユーザー業務知識には無関心だが…それで良いのかな?
IT業界の若手はユーザー業務知識には無関心だが…それで良いのかな?
昨年の夏まで長期休職をしていた身で、その関係上、職位も下げられたし、昨年度の仕事も環境構築の手伝いとか、対運用部門向けの手順書作りとか、シェルスクリプトの作成/テストとか、そういう領域から仕事に戻ってきた。
個人的には環境やシェルプログラミングも勘所を取り戻せたので良かった。何故か、こういう実機作業は『若いモンの仕事』と決めつける風潮があって、それは良くないと感じていた。
その感覚はこれからも大切にして行きたいと思っている。
職場復帰から半年以上経過して、何とかやれやれと思っていたところ、年度が代わって4月。
いきなり、割と大規模な案件の最上流工程(要件定義から)を任されることになった。
当該のユーザー業務や既存システムに関する有識者が、私以外にほとんど居ないという哀しい実情もあった。
ユーザー業務の方は、あくまでもシステム仕様面からしか詳しくはなかった訳だが、何せ、下記の記事にも記したように、ユーザー側は『定期人事異動』で人がどんどん入れ替わる状況であるため、気がつくとユーザー側の担当者も、既存の業務もシステムもよく知らない、という事になる。
プロジェクトマネージャーなど、管理する者の目線で考えてみると、私が昨年度、主にやってきたシェルプログラミング等の実機作業は、いざとなれば他にも同じような、もしくはより高いスキルを保有している人材はたくさん居る、ということになる。
私の中では、「IT汎用スキル」を多く持った人材という言い方をしている。「IT汎用スキル」を多く持っていたり、高いレベルの人材は、探せばたくさん居る訳である。
一方、今年度から私がやっている仕事は、全くできないという事はないだろうが、知っている人と知らない人とでは、アウトプットの速度や品質が、それこそ何十倍にもなってしまうような仕事かもしれない。(既存システムの設計書などの整備状況にもよるが、設計書をいくら読んでも『この処理にはどういった意味/意図があるのか』が、わからない)
こういった知識やスキルは、上記の「IT汎用スキル」と区別する意味で、「非汎用スキル」もしくは「ユーザー業務知識」という分野になるだろうか。
後者の知識やスキルを持つ人材が、そもそもどこにも居ない(昔は居たが失われた)、もしくは、極端に少ない、というのが、いまの日本のIT業界の現実であり、課題である。
これには日本のIT業界のガラパゴス体質も無関係ではない。本来ならば後者のような知識を持つべき人材(ユーザー企業内部もしくは一次請けで保守を任されているIT企業内部)が持っておらず、言葉は悪いが下請けIT企業の技術者に丸投げする行為が横行してしまうと、たいてい、いつかは失われてしまう。
「潰しが効かない」は実は二律背反である
昔の私は、ユーザー側の業務知識などには、まるで興味がなかった。上記で言うところの「IT汎用スキル」を持つことこそが良い事であると信じていた。
それは、今の若手メンバーにも言える事でもある。皆、業務知識などには興味がない。
何故だろうか。
それは一言で言うならば、『潰しが効かない』知識/スキルであるためだ。
このような知識をいくら高めたからといって、まず活かせる場が限られすぎている。転職して他の業界にでも行けば、まるで役に立たない知識だと思える。
転職とまでは行かずとも、プロジェクトの下層で『動かされている』身では、繁忙となったときだけ使われて、それが過ぎれば、また他のプロジェクトに否応もなしに移らされてしまう。(専門家として処遇されない)
確かに、そういう面はある。
だが、私は三年間、仕事を離れてみて、世の中を客観的に前よりは見るようになって、こう思うようになった。
上記のような『潰しが効かない』仕事でも、それをやる機会があるなら金を払ってでもやってみたい、と、そう考えている人も世の中には居る。
それは何故か。
“「IT汎用スキル」のみ"での競争は、とてもツライからである。
競争相手が大勢いるという状況は、過当競争を招く。
一方で、"「IT汎用スキル」に加えて「ユーザー業務知識」も兼ね備えている"という場合は、実はほとんど競争がないのである。
私の観測範囲でも、私よりも年上のベテランSEが、その業務知識や非汎用スキルを買われて、元請けIT企業に転職するという場面を何回も見てきた。
こういう事を、若手にわかって欲しいのだが、なかなか難しい。