企業システムの真髄はバッチ処理にあり!
企業システムの真髄はバッチ処理にあり!
「基幹系業務システムの真髄」は夜間などにユーザーから見えないところ(バックエンド)で稼働しているバッチ処理にある。
銀行や保険会社などの金融機関における様々なお金の計算もバッチ処理で行われている。
製造業における生産数と在庫数と売上数の帳尻合わせもバッチ処理で行われている。
公的機関の様々な受付業務からはじまる工程管理の整合を取る処理やシステム間連けいもバッチ処理で行われている。
官公庁における戸籍などの個人情報のマスター化もバッチ処理で行われている。
あらゆる企業の毎月の経理精算や給与支払いもバッチ処理で行われている。
上に挙げたのはほんの一例にすぎない。
どれも非常に地味な印象を受ける処理である。
まず華やかな印象はない。クリエイティブな印象もまったくない。
しかし、これらのシステム処理が、ある日突然、停止したり、消えてなくなってしまったりすると、その企業そのものの活動のみならず、広く社会一般にまで悪影響を与えてしまう。
そういったシステムこそが「基幹系システム」なのであり、「プラント型IT」なのである。
Web系などの人の目につく部分(フロントエンド)のシステムは、「ツール系IT」であり、まるごとどこからか買ってきて入れ替えても、その企業の存続には影響しない。
しかし、バックエンドシステムのような「プラント型IT」は、その企業の競争力を生み出している業務そのものと一体化している。
そのため、簡単によそから買ってきて入れ替えることはできない。
そして、その「プラント型IT」の更に根幹部分を担っているのが、バッチ処理なのである。
例えばamazonなどにおいて、「バッチ処理」に関する書籍を検索してみても、ひっかかるのはほとんどが「Windows(MS-DOS)コマンドプロンプトにおけるバッチファイル」に関する書籍ばかりである。
こんな情勢では、世の中の若手のITエンジニアにとって、上記のようなバッチ処理の設計が、縁遠いものとなってしまっているという点も、肯ける部分がある。
睡眠時に脳がフル稼働しているのと同じく社会のバックグラウンドではバッチ処理がフル稼働している
近年の脳科学において、記憶の定着に、睡眠が重要な役割を果たしていることがわかってきた。
世の中のバッチ処理も、脳における睡眠と同じような存在なのである。
やがて迫りくる様々な基幹系システムのブラックボックス化
情報系の学校の授業や、IT企業の新人研修において、画面を持たないバックエンド処理であるバッチ処理について、ろくに教えないということが当たり前になって、かなり経過した。
「プログラミングは楽しい」ということばかりを、ネットや書籍では喧伝しようとしている。
それを否定するつもりはない。
しかし、一方では、社会を支えている地味なシステムが、人知れずバッチ処理として動いている。
「クリエイティブ」とか、「楽しさ」とか、そういった感覚とは、およそ無縁のシステムである。
こういったシステムの担い手も、本当ならば、育成しなければならない。
だが、多くの人々は、バッチ処理システムの存在すら知らないのである。
情報システムは、工業製品としての色合いも強く持っている。
しかしながら、何故かIT産業の有名人たちは、その事実から目を背けている。
やがて、社会を裏側で支えている基幹系システムの保守という地味な仕事の担い手が、圧倒的に足らなくなる時代がやってくるだろう。
そのときになって、後悔しても、すでに遅いのだ。