IT業界の本当の問題はユーザーとベンダーとの距離にある
IT業界の本当の問題はユーザーとベンダーとの距離にある
(関連リンク)
「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(42):
こんなことも知らないんですか? ベンダーって勉強不足ですね
正しい要件定義のためには、ベンダーにも業務知識が必要
システム開発の上流工程に向く人と向かない人…(単なるグチ)
(記事紹介)上流工程に向かう時の心構えとして…確かにそう思う
ソフトウェア開発でくりかえされる「競争発注」の愚行
最近、敢えてリンクは貼らないが、『日本には文系システムエンジニアなる存在が居てそれらが業界の問題である』とか、『欧米ではソフトウェアエンジニアには文系ではなれないしもっと高待遇である』とか、そういった論調を目にする。
いわんとするところはわからないでもない。
しかし、日本の商慣習や文化的な背景なども踏まえると、そういう問題ではないと思う。
無論、中小IT企業の一部にはびこっている『ろくな経験もない新人を経歴詐称して客先に送り込む』というビジネスモデルはすぐにでも抹殺されるべきだが…。
学歴が、理系だとか文系だとか、そんな事は『思考停止』した結論ではないか。
社会人になってからだって、努力して伸びる人も居るし、その逆も然りである。
何でも学歴に論点を収束させるのは、それこそアタマが悪い。
本当の問題は下記のような事である。
人月単価契約が横行しているため、個人や組織の固有スキルや業務知識などによる『生産性の差』『品質の差』がまったく評価されていない
ユーザー側が要件定義を軽視するために事前見積もりによる請負契約のリスクが高すぎる
システム開発は、建築業界に似た構造を持ってはいるものの、実際の仕事は建築業界と同じようには進められない。
もしも『作業量』に対してしか対価を払えないのなら、見積もりではなく作業結果を見てから払う契約にしなければ…。
(生産性や品質は絶対に人や組織によって差が出る。おそらく驚くほどの差として。)
そして生産性や品質の差にはしっかりと報いなければならない。
日本にだって、各業種/各業界ごとに、キーパーソンとなっている、ある意味でスーパーエンジニアと呼んでも良いような人が居る。
こういう人たちを正しく評価せず、単なる"業者"扱いして買い叩き、使い潰して来たことが、日本のIT業界の本当の問題であり、闇なのである。
本当のコア人材(人財)が育成されるには10年単位の時間が必要
とある地方の公共事業体の業務システムにおいて、その発注のやり方で、格差が出ている事例を最近知った。
一方では、その分野のスペシャリストと呼べるベテランリーダーが、人数も少ないシステム開発/保守の現場を支えている。そこではシステム開発者側の方がユーザー業務に詳しい事もあるらしく、システム開発者側が主導権を握れている。しかし、そのベテランリーダーの後進が育たない事がリスクとなっている。
他方では、競争発注(競争入札)によって複数のITベンダーに同一部門のシステムが切り取られ、保守体制もバラバラになっているという。
まぁ、どちらの事例でも、ユーザー側自らがシステム開発/保守はやっていないという点は同じだ。
欧米と比較するならば、ユーザー側自身のシステム開発への関与度合いだろう。
以前にも書いたが、ユーザーはシステムになんて興味が無く、システム開発者の多くはユーザー業務に興味が無い。
IT業界の若手はユーザー業務知識には無関心だが…それで良いのかな? - IT (情報技術) 学習記録
これでは、要件定義なんてやる人が居なくなるだろう。
ずさんな要件定義を行って困るのは、ユーザー側でも、システム開発者側でも、どちらも『現業』『現場』の人間である。